天使が舞う孤島で殺人事件
【楽園とは探偵の不在なり:斜線堂 有紀】

国内ミステリ

今日は天使が存在する世界で起こる連続殺人事件を紹介使用。

天使!
それはそれは美しい姿をしていて、悪人に善を説くような存在なんですね!

いや、天使の姿は醜くい。
口も潰れていて発声することも出来ないし、殺人者を地獄に堕とすんだ。

そんなバカな……
天使というよりも、悪魔ですよ……

概要

  2人以上殺した者は“天使”によって即座に地獄に引き摺り込まれるようになった世界。過去の悲惨な出来事により失意に沈む探偵の青岸焦は、「天国が存在するか知りたくないか」という大富豪・常木王凱に誘われ、天使が集まる常世島を訪れる。そこで青岸を待っていたのは、起きるはずのない連続殺人事件だった。犯人はなぜ、どのように地獄に堕ちずに殺人を続けているのか。最注目の作家による孤島×館の本格ミステリ長篇。

「BOOK」データベースより

大きな3つの魅力

天使が「降臨」して世界中が一変した世界観

 ・天使という設定を上手く練り込んだクローズドサークル。

天使が集う孤島で起きる連続殺人。

 ・天使が常に浮遊する常世島に集まった客人たち。

探偵「青岸」の矜持。探偵の意義。

 ・青岸が探偵としてきて歩んできた道程。彼の背景が興味深い。

どんな事件なのか?

  • 第一の殺人
    • ナイフで刺殺される。
    • 床に万年筆が置かれていた。
    • 天国の議論に巻き込まれて殺された?
  • 第二の殺人
    • 槍で喉を貫かれて死亡。
    • 左利きは事件解決に意味はあるのか?
    • 犯人は天使によって地獄に堕とされたのか? それとも……
  • 天使という存在について
    • 5年前に突如「降臨」した異形。
    • 醜い姿をしていて、発声できない。好物は砂糖。
    • 死んだら砂となって消えていく。

オススメ度

謎の魅力:★★★☆☆(天使という設定を盛り込んだ謎が、唯一無二で面白い)

登場人物:★★★☆☆登場人物が多くてやや、覚えづらいか? 探偵青岸のキャラがグッド

読み易さ:★★★☆☆(常世島と青岸の過去が混ざっているのでやや読みづらいか?

総合オススメ度:B
天使が存在する世界を上手に利用した、クローズドサークル。一読の価値あり。

感想

 天使が「降臨」した世界という設定。

 突如空から出現した醜い姿の天使は、ただ浮遊するだけで人に興味を持たない。持つのは好物の砂糖のみ。まるで餌に群がる鳩のようでもある。私は天使というよりも、灰色で朽ちた翼を持つ堕天使を想像した。

 そして、人に危害を加えるようなことはしない。ただ、ひとつを除いては。

 それは人を2人以上殺すと地獄に堕とされるということ。まるで奈落に繋がるような穴が開き、2人以上殺した人物はその穴に天使によって引き摺り込まれるのだ。

 天使の出現により世界は様変わりした。

 果たして、争いはなくなったのか? 戦争は無くなったのか? 人々の日常生活に異変はあったのか? 例えば、事故や医療の現場で人を殺めてしまった場合はどうなるのか? 

 そういった疑問にもしっかり本書で描かれている。

 主人公の青岸は天使を狂信する常木という男に、常世島に招かれる。

 そこは天使たちが集う、絶海の孤島だった。 一癖も二癖もある招待客。

 そんなミステリ小説お馴染みの、お膳立てが揃ったロケーションで何も起こらないはずもなく、殺人事件が発生!

 天使のルールがあるから、犯行はすぐに止まるかと思ったが……。事件はますます複雑化していきます。

 この天使の特性を使った物語の組み方が、見事でした。それに主人公の青岸の背景もしっかり描いておりハードボイルドといった感じで渋かったです。

 最近はこういった特殊設定ミステリが多く、玉石混交の作品もありますがこれは間違いなく「当たり」だと思います。

 次回も宝石のようなミステリを期待しております。

天使の設定を巧妙に使ったトリックには脱帽だぞ!
こんなトリックを使ったのか……、と読んだ時には驚愕した。

天使のビジュアルが不気味すぎですよ……。
もっと可愛らしい姿を想像していました。

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