現世で殺された人たちが導かれたのは、なんと天国。
そして天国でも殺人事件が発生するんだ。
て、天国での殺人事件……。
とうとう、殺人現場は天国まで行きつきましたか。
天国にいる人たちは共通して記憶を失っているんだ。
ただ、誰かに殺されたという一点を除いてな。
自分の記憶と犯人を探し出す物語なんですね……。
一体主人公たちは誰に殺されたんだ……。
概要
俺は、間違いなく殺された。なのに、ここはどこだ?気がついたら目の前にはリゾートビーチと西洋館。姿の見えない配達人から毎朝届く不思議な新聞によると、現世で惨殺された6人が、記憶を無くした状態で、この天国屋敷に返り咲いたらしい。俺は誰だ?なぜ、誰に殺された!?俺たちは真相を知りたいー。館ものクローズドサークルに新風を吹き込む「全員もう死んでる」ミステリ。
「BOOK」データベースより
大きな3つの魅力
事件の舞台が天国
・欲しいものは手に入り、ゴミは消えて、消耗品は補充される。まさに天国!
分かりやすい登場人物たち
・記憶喪失だから、みんな特徴で呼び合っているので分かりやすい。
現世で起こった事件を追う
・6人は喉を切られて惨殺された。この天国に犯人はいるのか?
どんな事件なのか?
- 現世の事件
- 6人がほぼ同時に喉を切られて死亡。
- パーティーでの惨殺。
- 何故、犯人も喉を切って死んだのか?
- 天国での現象
- 納戸に望んだものが現れる。
- ゴミは勝手に捨てられ、消耗品は勝手に補充される。
- 天国で死んでも、気合いで生き返ることができる。
- 天国を楽しむ彼ら
- 遊具や豪華な食材で、ビーチで遊ぶ彼ら。
- 新聞で現世の様子を知り、推理を進める。
- 感傷に浸れるラストシーン
オススメ度
謎の魅力:★★★☆☆(設定自体はとても面白いが、ちょっとなんでもアリすぎでは?)
登場人物:★★★☆☆(登場人物は分かりやすいが、全員記憶喪失という点で魅力が減)
読み易さ:★★★☆☆(みんな死んでいるので、緊迫感に欠けたゆったりした文章)
総合オススメ度:B
特殊設定のクローズドサークル。なんでもアリ感が漂っていて全体的にほんわかした印象。
感想
ある意味脱力系ミステリ?
今までのクローズドサークルの推理小説は、次に誰が殺されるんだろう、という緊迫感。こんな殺人犯がいる部屋にいられるか! 俺は自分の部屋に戻るぞ! といった調和を見出す登場人物。そして、論理的で整合性が取れた美しい探偵の推理、というのが醍醐味(セオリー)でしたが、今作は殆どそういった出来事がない。だから、肩の力を抜いてリラックスして読めることができるかもしれませんね。
誰かが死んでも、天国だから気合いで生き返ることができる。だから緊迫感は生まれないし、自己中な人物も現れない。だって、全員死んでるんだから。全体的に「あきらめ感」が漂っていて、妙な読み心地でした。
天国独自のルールによって、推理して、徐々に真相に迫っていく工程は大好きです。 トリックが早々に分かってしまったのが、残念ではありましたが、充分に楽しむことができました。
犯人の正体を暴く、という推理ものとしても面白かったですが、記憶を失った彼等が、自分と向き合って本当の自分を見つけていくのは、感動的で面白かったです。
新潮ミステリー大賞最終候補に残った今作ですが、次回作も大いに期待できると思います。この作者にはこの路線で特殊設定ミステリーを描いて欲しいです。
今までと一味違ったクローズドサークルの作品を読みたい人にオススメな一冊だ。
この天国でのルールを上手く理解できるかな?
ラストシーンは感動でしたよ……。
まさか、こんな最期を迎えることになるとは。
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